【この講で学習すること】
・新規設立と増資の違い
・増資の場合の資本金計上の原則と例外
・増資に伴う諸費用の扱い

新規設立と増資の違い

新規の株式会社設立時も、増資の場合も、出資者(株主)を募り、出資金を払い込んでもらい、資本金とするという点では、どちらも同じことです。

(3級「増資」の復習・・・「スキマ時間で簿記3級!増資」へ

では違いは?

設立と増資の決定的な相違は、新規設立では、出資時点でまだ会社が設立されておらず会計帳簿もなく、設立が完了したときにイッキに資本金(及び資本準備金)になります。逆にいえば、それまでは何にも仕訳しません。
ところが、増資の場合は、すでに会社があり帳簿もあるので、出資者から出資金が払い込まれれば、何らかの仕訳をしなければなりません。

「現金・預金/資本金(及び資本準備金)」
でいいじゃないかって?

でも、その都度払込みされた時点では、いくらが資本金でいくらが資本準備金って決まっていないのです。

増資の場合、新株の募集を行い、希望者は申込期日までに出資金を払い込むわけですが、その申込期日をもって正式に株主となり、出資金も資本金(及び資本準備金)になります。
ということは、払い込みから申込期日までの取り扱いが必要になります。

この、払い込みから申込期日(正式に株主、そして資本金になる)までの払込金に使うのが「株式申込証拠金」勘定(純資産)です。

【設例】
(1)新株100株の募集を行い、1株につき¥10,000で発行することとし、申込期日までにその全額が別段預金に払い込まれた。

【仕訳】
(1)
(借)別段預金 1,000,000
/(貸)株式申込証拠金 1,000,000

「別段預金」とは?
資本金(及び資本準備金)と確定するまで、他の事業資金と同じ普通預金や当座預金とは別に、払い込み専用の講座を設けることがあります。これを、事業用の普通預金や当座預金と区別して、別段預金とします。

増資の場合の資本金計上の原則と例外

【設例】
(2)上記の申込期日が到来したため、その払込額を資本金に振り替えるとともに、別段預金は当座預金へ振り替えた。なお、資本金への振り替えは、会社法で認められる最低額を計上することとした。

「会社法で認められる最低額」
覚えてますか?
株式会社の新規設立の場合と同じです。
▶▶▶「株式会社の設立」へ

【仕訳】
(2)
(借)株式申込証拠金 1,000,000
(借)当 座 預 金 1,000,000
/(貸)資 本 金 500,000
/(貸)資本準備金 500,000
/(貸)別段預金 1,000,000

申込期日をもって、株式申込証拠金は、正式に資本金(及び資本準備金)に振り替えます。
資本金計上の最低額は、新規設立と同じ1/2です。

増資のための諸費用(株式交付費)

株式発行のために係る費用について。
会社新設時は、設立までに必要な費用として「創立費」に計上しました。
増資時は?
さすがにもう「創立費」は使えませんね。
増資の場合の株式発行費用は「株式交付費」勘定を使います。

【増資のまとめ】
・増資の場合、申込期日までの間、払込金は「株式申込証拠金」勘定に計上しておく
・増資の場合も、設立時と同じく、資本金計上の原則(全額)と例外(1/2まで資本準備金)が適用される
・増資のための株式発行費用は「株式交付費」

解ける!日商簿記2級過去問レベル問題演習

次の取引について、下記の語群から勘定科目を選んで仕訳してください。
新株200株(1株の払込金額¥15,000)を発行し、全株について引受けを得て、その全額を申込証拠金として別段預金に預け入れていたが、株式の払込期日を迎えたので、申込証拠金を資本金に充当し、別段預金を当座預金に預け替えた。なお、資本金には会社法の規定する最低限度額を組み入れることとする。
(語群:現金・当座預金・別段預金・資本金・株式申込証拠金・資本準備金・利益準備金)

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