この講で学習すること
・当期純利益(純損失)から損益勘定へ
・損益勘定から繰越利益剰余金勘定へ
・繰越利益剰余金から、配当・積立・繰越へ
・配当の仕方
・積立とは
・そのまま繰り越す場合

当期純利益(純損失)から損益へ、損益から繰越利益剰余金へ

【当期純利益(純損失)から損益勘定への振替仕訳】
(総費用<総収益=黒字の場合)
(借)(総収益)XXX
/(貸)(総費用)XXX
/(貸)損 益  XXX
(総費用>総収益=赤字の場合)
(借)(総収益)XXX
(借)損 益  XXX
/(貸)(総費用)XXX

もちろん、(総収益)や(総費用)は勘定科目名ではなく、実際には具体的な売上や受取●●、〇〇費といった収益や費用の各勘定の残高を、反対仕訳してゼロにするわけでした。

損益から繰越利益剰余金へ

【損益勘定から繰越利益剰余金勘定への振替仕訳】
(黒字の場合)
(借)損 益 XXX
/(貸)繰越利益剰余金 XXX
(赤字の場合)
(借)繰越利益剰余金 XXX
/(貸)損 益 XXX

黒字だったら・・・配当・積立・増資・繰越

日商簿記3級の学習では、損益勘定は資本金に振り替える=増資しかありませんでしたが、2級の株式会社では、そのほかに
・株主への配当
・各種目的に向けた積立
・そのまま繰越
と、儲け(剰余金)の処分方法にいくつかのバリエーションがあります。
剰余金総額のうち、いくらは配当、いくらは積立、残額は繰越、といった配分になります。

配当

出資者(株主)から出資を集めて資本金を運用する株式会社においては、事業の結果、儲けが出たら株主に還元する=配当が基本です。通常は
1株当たり〇〇円の配当金×発行済株式総数
で計算します。

【設例】
株主総会において、繰越利益剰余金¥3,000,000のうち、1株当たり10円の配当金を出すことに決定した。発行済株式総数は100,000株である。

【仕訳】
(借)繰越利益剰余金 1,000,000
/(貸)未払配当金   1,000,000

なんで「未払」配当金かわかりますか?
株主総会当日、同時に配当を出すわけではなく、実際には準備が整ってから、後日に支払われますので。

もちろん、この配当総額が、繰越利益剰余金の範囲内に収まるのが原則ですから、儲けがなかったり赤字であれば、「無配」ということにもなります。

配当を行う場合には、あるお約束があります。それは後ほど。

積立

いつも黒字とは限りません。大きな出費や継続的な配当などに備えて積み立てておくのが積立金です。
例えば、新築のためなら「新築積立金」、赤字でも継続して配当を出すためなら「配当平均積立金」といった目的別の積立金を設定できます。
もちろん、特に目的のない積立金もあります。
「別途積立金」
といいます。

【設例】
株主総会において、繰越利益剰余金¥3,000,000のうち、1株当たり10円の配当金及び別途積立金¥500,000を積み立てることに決定した。発行済株式総数は100,000株である。

【仕訳】
(借)繰越利益剰余金 1,500,000
/(貸)未払配当金   1,000,000
/(貸)別途積立金    500,000

繰越

配当や積立などせず、あるいは残額として繰り越す場合は、何も仕訳せずそのままにしておきます。
なぜなら、もともと「繰越利益剰余金」勘定にあるからです。

つまり、前項の【設例】でいえば、300万の繰越利益剰余金から、100万は配当、50万は積立へ使うので、残りの150万は、そのまま繰越利益剰余金のまま、次回の利益処分までとっておくわけです。

ところで、損益勘定の貸借差額を、なんで「繰越利益剰余金」勘定に振り替えたのでしょうか?
何が「繰越」なんでしょうか?

総収益と総費用を損益勘定に振り替え、さらに損益勘定の貸借差額を繰越利益剰余金勘定に振り替えるのは、期末の決算整理仕訳です。

そして、その剰余金(儲け)を、いくら配当に回していくら積立に回して、といった利益処分を決定するのは、株主総会なわけで、タイミングは次の会計期間に入ってからです。

つまり、期末日に仕訳される損益勘定の貸借差額は、必ず次の期に繰り越されるわけです。

赤字だったら

ところで、
総費用>総収益
つまり、当期純損失で、損益勘定の貸借差額が借方残の場合はどうなるか?

【赤字の場合の損益勘定振替仕訳】
(借)繰越利益剰余金 XXX
/(貸)損益 XXX

マイナスの場合も「繰越利益剰余金」勘定です。
借方に計上されるということは、マイナスという意味です。
もし、前期からの繰越利益剰余金が貸方にプラスで残っていれば、それを借方から減らすことになります。

このように、前期からの剰余金があればそれを取り崩すわけですが、それがなかったり足りなかったらどうするか?

積立金があればそれを取崩したり、利益準備金や資本準備金を取り崩したり、それもなければ減資(資本金の減少)したり、あるいはそのまま繰り越したりがあります。

剰余金の配当と処分のまとめ
・(配当)繰越利益剰余金/繰越利益剰余金
・(積立)繰越利益剰余金/〇〇積立金
・(増資)繰越利益剰余金/資本金

ところで、配当金を出す場合には、純資産保全のため、ある制約を課せられます。
そしてそれが、日商簿記2級で狙われる最頻出論点になります。
それについては次回
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