この講で学習すること
・退職金支給の仕訳
・退職給付引当金の繰り入れ
・退職給付引当金を使った退職金支給の仕訳

退職金支給の仕訳

ボーナス(賞与)の支給も大きな出費ですが、従業員1人当たりで見れば、もっと大きな労務費があります。
退職金です。
賞与は、年2回支給の場合、支給対象となる期間と実際の支給タイミングは、せいぜい半年~1年以内のスパンでのずれに収まりますが、退職金の場合、勤続何十年にわたって、1人当たり数千万円に上ることもあります。

【設例1】
従業員A氏が定年退職し、勤続年数に応じた退職一時金¥20,000,000を、当座預金口座から振り込んだ。

【仕訳】
(借)退 職 金 20,000,000
/(貸)当座預金 20,000,000

退職給付引当金の繰り入れ

「退職金」勘定は、給料や賞与と同じ、費用(労務費)の勘定科目ですが、何十年の勤続年数に応じて発生した退職金を、退職日の属する会計期で一気に費用化するのは、費用の期間対応の観点から好ましくありません。

この場合、退職金の算定の基礎となる勤続年数つまり勤務していた各期間に、それぞれの期間に対応する退職金相当分を費用化しておく必要があります。

そこで、退職金支給の対象となる従業員の在籍した期の期末に、決算整理として、その期に対応した退職金相当分を費用化して、「退職給付引当金」という勘定に繰り入れます。

ここで、繰入に関する勘定科目名は、「退職給付引当金繰入」勘定でもよいのですが、「退職給付費用」勘定を使うのが一般的です。

(※一般的には、退職金の支払時も「退職金」勘定ではなく、「退職給付費用」勘定で統一することが一般的です。)

【設例2】
本日決算日につき、従業員の退職給付の見積りを行った結果、当期の退職給付費用は¥500,000と見積もられた。

【仕訳】
(借)退職給付費用  500,000
/(貸)退職給付引当金 500,000

日商簿記検定2級では、【設例2】のような問題が、第3問の決算の問題で頻繁に出題されています。

ではこの見積もられた¥500,000というのは、どういう計算で算出されたのでしょうか?

これは難しい計算で、退職金の支給規定により退職時に見込まれる退職金に関し、退職時(見込)から現在(決算整理時点)にさかのぼって利息相当額を割引計算するなどして、算出します。

ただしこの計算は難しいので、日商簿記検定2級では問われません(1級の学習範囲)。
ご安心を。

退職給付引当金を使った退職金支給の仕訳

【設例1】
従業員B氏が退職し、勤続年数に応じた退職一時金¥10,000,000を、当座預金口座から振り込んだ。ただし、退職給付引当金残高が¥50,000,000あった。

【仕訳】
(借)退職給付引当金 10,000,000
/(貸)当 座 預 金 10,000,000

退職給付引当金を全額充てることができる仕訳でした。

退職給付引当金のまとめ
・退職金の支給に際し、見込まれる退職金額のうち当期に発生したと見積もられる金額を、決算整理時に退職給付引当金に繰り入れ、退職給付費用(または退職給付引当金繰入)勘定で費用化する。

解ける!過去問レベル問題演習

次の取引について、下記の語群から勘定科目を選んで仕訳してください。
本日期末決算日につき、退職給付引当金の当期の負担に属する金額¥80,000を計上した。
(語群:現金・退職給付引当金・退職金・退職給付費用)

>>>解答・解説はこちら(「スキマ簿記2級!問題演習編」へ)