この講で学習すること
1.「販売のつど売上原価に振り替える方法」って?
2.なんでこんなめんどくさいことするの?
3.「販売のつど売上原価に振り替える方法」と3分法、分記法のまとめ
販売のつど売上原価に振り替える方法とは
日商簿記2級で出題されることとなったこの「販売のつど売上原価に振り替える方法」(売上原価対立法ともいいます)について、いきなり仕訳方法からご紹介します。
【商品仕入時】
仕入勘定ではなく、分記法のように「商品」勘定(資産)を使う
【商品売上時】
3分法と同様、原価と儲けを分けず、売価ベースで「売上」勘定(収益)に計上する
とともに、当該売上分の商品原価について、商品勘定から売上原価勘定に振り替える
わかりにくいので、さっそく具体的な設例で見ていきましょう。
(1)商品A(¥@50)を40個仕入れ、代金は現金で受け取った。
【仕訳】
(1)
(借)商 品 2,000
/(貸)現 金 2,000
分記法と同じで、仕入勘定ではなく、商品勘定を使います。
(2)(1)の商品Aのうち30個を¥@100で売り渡し、代金は現金で受け取った。
【仕訳】
(2)
(借)現 金 3,000
(借)売上原価 1,500
/(貸)売 上 3,000
/(貸)商 品 1,500
太線部分が、「売上原価に振り替える」仕訳です。
売上は3分法と同じく、売価ベースで収益に計上したうえで、原価ベースの商品(資産)を貸方から払出し、売上原価(費用)としています。
3分法では決算整理仕訳でおこなっていた売上原価の処理を、販売のつどやるというわけです。
なぜ、こんなめんどくさいことをするのか?
「分記法と3分法のミックス?」
「分記法よりもさらにめんどくさいじゃん?」
「これなら分記法でいいじゃん?」
って思いますよね。
そもそも、販売のつど商品の原価を記録するのがめんどくさいから、3分法でまとめて決算時に処理するんじゃなかったっけ?
でも考えてみれば、決算を締めてみないと儲けがどれくらいかわからないなんて、事業の経営上はありえないハナシですよね。
商品ごとの儲けを把握して、どの商品の利幅が大きいのかなど、個別に儲けを把握しておくことは、経営戦略上必要なことです。
それに、「販売のつどいちいち原価と儲けを記帳するのが手間」といっても、それは手書きのハナシであって、会計ソフトやシステムを使えば、そんなに手間でもないわけです。
「だったら、分記法でいいじゃん?」
ってなりますよね。
しかし、最終目標である決算書類の一つ、損益計算書(P/L)のつくりを思い出してください。
売上高から売上原価を引いて、売上総利益を出すというつくりになっていますよね。
分記法では、商品売買益の残高合計で売上総利益は分かりますが、売上高と売上原価がそのままではわからないことになります。
そこで、P/Lに必要な、売価ベースの「売上」は残しつつ、やはりP/Lに必要な「売上原価」と「商品」(次期への繰越商品のこと)を取引の都度明確にする、この「販売のつど売上原価に振り替える方法」が登場するわけです。
このやり方だと、日次でも週次でも月次でも、必要な時にいつでも売上高と売上原価(それを引いた売上総利益)、それに在庫商品がすぐに把握できるメリットがあります。
特に日商簿記では、月次決算を意図して、このやり方を出題範囲にしているようです。
ただし、通常の仕訳はやはり3分法が一般的なので、今後このサイトでも特に指定がない限りは、3分法で会計処理することとします。
分記法と3分法、販売のつど売上原価に振り替える方法のまとめ
さいごに、分記法と3分法、販売のつど売上原価に振り替える方法の仕訳とメリット・デメリットをまとめておきます。
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解ける!過去問レベル問題演習
次の取引について、下記の語群から勘定科目を選んで仕訳してください。 当社は得意先に対し、商品100個(原価@¥400、売価@¥500)を販売し、代金は翌月末に受け取ることとした。なお当社は、販売のつど商品の売上原価を売上原価勘定に振り替える方法を採用している。 (語群:売掛金・未収入金・商品・売上・仕入・売上原価) |