この講で学習すること
・「無形」なのに劣化するの?
・無形固定資産の償却するもの、償却しないもの
・無形固定資産の償却方法

無形固定資産の償却の考え方

有形固定資産の学習の花形は減価償却でした。
有形固定資産には耐用年数があり、その期間に渡って徐々に価値が落ちる(劣化する)という考え方でした。
では無形固定資産の場合は?
基本的に劣化しないので、耐用年数もありません。
でも、無形固定資産でも減価償却するものがあります。
日商簿記2級の学習範囲では、むしろ減価償却するものばかりです。
ではなぜ、価値が減るのか?減らすのか?

ソフトウェアの場合

パッケージが破損したり、媒体が傷ついて劣化したりすることはあっても、コンピュータに取り込んだプログラムデータは不変のはずです。
では、永久に使えるのか?
実は、その「不変」であることこそが、価値が減る主因になります。
導入したときは最新版でも、1年、2年と使用していくうちに、他の最新ソフトウェアと比べて品質が劣り、買い換えやバージョンアップが必要になります。
そこで、会計上は最長5年の範囲内で、自社が判断する見込み利用可能期間を通じた定額法による減価償却を行います。

のれんの場合

「のれん」つまりブランド力については、ソフトほど陳腐化しないにせよ、未来永劫の優位性が約束されるものでもありません。
会計上は、最長20年の範囲内で、「効果が続く」と自社が判断する期間にわたって定額法で償却します。

その他の権利の場合

特許権や商標権など特許庁に出願して発効した権利は、5年や10年といった有効期間が定められます。
徐々に価値が減るという性質ではないにしろ、この有効期間にわたって定額法で償却します。
鉱山などで鉱物を採掘するための鉱業権については、定額法のほか、生産高比例法による償却も認められています。
定額法のものは、基本的に直接法で残存価額ゼロまで償却します

(参考)減価償却しない無形固定資産
日商簿記2級の試験で問われることはないでしょうが、無形固定資産でも減価償却しないものもあります。
例えば、固定電話の電話加入権は、有効期間もなく、使おうと思えばいつまでも使える権利なので、減価償却しません。
(現実には、モバイル通信や光回線などの普及により、電話加入権の市場価値はだいぶ減っているようですが・・・)

無形固定資産の償却の仕訳具体例

【設例】
(1)当期首に経理コスト削減のため会計ソフト¥100,000を現金で購入した。
(2)決算にあたり、(1)の会計ソフトを5年間の定額法により償却した。
【仕訳】
(1)
(借)ソフトウェア 100,000
/(貸)現    金 100,000
(2)
(借)ソフトウェア償却 20,000
/(貸)ソフトウェア   20,000

【合格直結の考え方】
(1)販売目的ではなく、自社利用目的なので固定資産として借方に計上します。
(2)残存価額ゼロなので「取得価額÷利用年数」
直接法なので、減価償却累計額を使わず、直接「ソフトウェア」勘定を減らしています。
また、無形固定資産の場合、「減価償却費」勘定は用いず、各無形固定資産勘定名称+「償却」とします。
(例)
・のれんの場合→「のれん償却
・特許権の場合→「特許権償却

無形固定資産の減価償却のまとめ
1.有効期間・見込み利用可能期間にわたって
2.残存価額ゼロ・定額法・直接法で償却
3.ただし「減価償却費」勘定は用いず、「○○○償却」勘定と使う