この講で学習すること
・のれんとは
・なぜ「暖簾」なのか?
・「負ののれん」とは?
・のれんの発生する合併の設例

のれんとは

前講で学習しましたように、対等な企業合併において持分プーリング法により合併する場合は、両社のB/Sを合算するので、諸資産も諸負債も純資産も、もともと貸借が一致していた両社の合計になりますから、やはり借方合計=貸方合計になり、どこにも差異は出ません。当たり前ですね。

ところが、パーチェス法により合併(取得)した場合は、被合併会社(吸収されちゃう方)のB/Sの諸資産・諸負債を時価評価して、合併会社に合算します。
純資産は、基本的に対価として、被合併会社の株主に交付した合併会社の株式になりますが、これが、時価評価した諸資産-諸負債と一致しない場合が生じます。

言い方を変えますと、合併し合算した後の資産合計(借方)と、負債合計+純資産合計(貸方)が一致しなくなるということです。

このギャップ(借方合計-貸方合計)のことを、のれんといいます。

なぜ「暖簾」なのか?

この「のれん」(暖簾)の意味については、無形固定資産の講で、一種の営業権・ブランドであると説明しました。

本来であれば、諸資産から、返済しなければならない諸負債を差し引いた、純粋な資産分(純資産)で買い取る(=株式を交付するor代金を支払う)のであれば、等価交換です。

それが、もし諸資産-諸負債よりも、高値で買い取ったのであれば、その差額分は、実際の価値よりも高く評価した、つまり被合併会社のブランド力を買ったといえるわけです。そしてこの「ブランド」を和訳したのが「のれん」なわけです。
さて、この「のれん」は借方に発生しますか?貸方に発生しますか?

対価(発行した株式or支払った代金)=貸方の方が高いわけですから、借方合計の方が小さい場合で、差額(のれん)は借方に発生しますね。

「負ののれん」とは?

一方、時価評価された諸資産-諸負債よりも、買取価格の方が安い場合もあります。
正味の価値よりも安く評価したわけです。
この場合は、マイナスのブランド価値ということで、そのまま和訳して「負ののれん」といいます。

のれん・負ののれんの顛末

「のれん」「負ののれん」ともに、勘定科目名ですよ。
どちらも、発生すれば財務諸表・決算書類としてオモテに出る科目です。

「のれん」勘定については、復習になりますが、無形固定資産であり、そのブランド力の効果の及ぶ期間(最長20年)にわたって償却(費用化)していきます。
(▶▶▶無形固定資産の償却の講へ

一方「負ののれん」勘定は?
こちらは、発生した期に一括して特別利益として処理します。
というわけで、実務上は「負ののれん発生益」勘定という名称で使われることが多いです。

のれんの発生する合併の設例

【設例】
当社は株式会社ETを吸収合併し、新たに当社の株式100株(時価@¥500)を同社の株主に交付し、全額資本金とした。同社から承継した資産及び負債は次のとおりであった。
諸資産:簿価=¥80,000、時価=¥70,000
諸負債:簿価=¥30,000、時価=¥30,000
(諸資産・諸負債は勘定科目名ではありませんが、科目名は省略しているので、仕訳は諸資産・諸負債を使います)
【仕訳】
(借)諸資産 70,000
(借)のれん 10,000
/(貸)諸負債 30,000
/(貸)資本金 50,000

のれん・負ののれんのまとめ
・企業合併(取得)に際し、パーチェス法により諸資産・諸負債を時価評価して受け入れ、取得対価との差額をのれん・負ののれんという
・諸資産-諸負債<取得対価・・・のれん(借方)・・・20年以内均等償却
・諸資産-諸負債>取得対価・・・負ののれん(貸方)・・・発生時に一括特別利益