この講で学習すること
・為替レート変動のリスクを軽減するには?
・為替予約の仕訳方法とは
・為替予約済みで決算日を迎えたら
・為替予約済みで代金決済したら

為替レート変動のリスクを軽減するには?

【設例1】(再掲)
3月16日、アメリカの得意先に商品1,000ドルを輸出し代金は掛けとした。この時の為替相場は1ドル¥118であった。

【仕訳】
(借)売掛金 118,000
/(貸)売 上 118,000

前講の設例の売掛金のように、例えば
売上時:$1=¥118(売掛金$1,000=¥118,000)
決算時:$1=¥112(売掛金$1,000=¥112,000) 
決済時:$1=¥110(売掛金$1,000=¥110,000)
というように、為替レートがどんどん不利な方で向かっている場合、黙って手をこまねいているしかないのでしょうか?

こんなとき、先物為替相場を利用した為替予約をすることで、決済時の為替レートを固定することができます。

為替予約の仕訳方法とは

【設例1】のつづきとして、次のような手立てをとったとします。

【設例2】
3月24日、【設例1】で売り上げた掛代金受取りに関し、取引銀行との間で、1ドル¥115で為替予約を結んだ。
なお、3月24日の為替相場は1ドル¥116であった。

為替予約とは、決済当日の実際の為替レート(直物=じきもの=為替相場)がいくらであろうと、為替予約時に約束したレートで決済するということです。
為替予約をしておけば、この後、レートがいくら不利に働いても、これ以上の為替差損は出ないことになります。
(もちろん、予想に反してレートが有利に好転しても、予約したレートで決済しなければなりませんが)

【仕訳】
(借)為替差損益 3,000
/(貸)売 掛 金 3,000

為替予約を結んだ3月24日の時点で、決済レートが固定されたので、そのレートで換算した額に売掛金を評価替えします。

このように、為替予約時の会計処理(仕訳)も、レート変動による為替差損益と同じように処理することを「振当処理」といいます。

為替予約済みで決算日を迎えたら

【設例3】
3月31日、決算日を迎えた。
【設例2】で為替予約を付した掛代金について、決算整理を行う。
なお、3月31日の為替相場は1ドル¥112であった。

【仕訳】
仕訳なし

為替予約を付して、決済時の為替レートを固定した掛代金は、決算時点でも、決算日の為替レートで換算しません。
だって、レートがいくらになろうと、予約した$1=¥115で決済するわけですから。

為替予約済みで代金決済したら

【設例4】
4月16日、【設例2】で為替予約を付した【設例1】商品代金1,000ドルの送金があり、取引銀行で円貨に両替し当座預金口座に入金した。この日の為替相場は1ドル¥110であった。

【仕訳】
(借)当座預金 115,000
/(貸)売 掛 金 115,000

当然ながら、決済日当日の直物為替レートがいくらであろうと、予約時のレートで決済されます。

為替予約のまとめ
・決算日の直物為替レート変動による影響を軽減するために、あらかじめ決済時のレートを固定する約束をしておくことを為替予約という
・為替予約により決済時のレートが固定するので、為替予約時に予約レートで換算する
・為替予約済みの場合、決算時に直物レートで換算しない