この講で学習すること
・配当時のお約束
・準備金強制積立の設例

配当時のお約束

株主という出資者から資金の出資を募って事業を行う株式会社にとって、事業の結果得られた儲け(繰越利益剰余金)を、出資者である株主の配当に還元することは、当然のことであり、株式会社のおける簿記一巡の最終的な手続きになります。

一方、株式会社に資金を提供しているのは、株主だけではなく、資金を貸し付けている銀行など、債権者も重要な利害関係者といえます。

そこで、いくら当期は儲けが出たからといって、バンバン配当に回してしまうと、債権者側にとっては、担保となる資産が減ってしまうというリスクに見舞われます。いつも黒字とは限らないので、儲けが出たからと言って全部配当に出してしまうのはリスキーなわけです。

そこで、会社法では繰越利益剰余金などの純資産から配当金を出す場合、資産保全のため、一部を準備金(資本準備金・利益準備金)に積み立てるよう強制しています。

具体的には、

1.資本準備金と利益準備金の合計額が資本金の1/4に達するまでは
2.配当に出す繰越利益剰余金の1/10を利益準備金に積み立てる

というものです。

つまり、配当のたびに、配当額の1/10を利益準備金に積み立て、資本準備金+利益準備金の合計額が資本金の1/4に達したら、積み立てをストップしていい、というわけです。

準備金強制積立の設例

【設例1】
株主総会において、繰越利益剰余金¥3,000,000のうち、1株当たり10円の配当金(発行済株式総数は100,000株)及び別途積立金¥500,000を積み立てることに決定した。なお期末各勘定残高は、資本金¥5,000,000、資本準備金¥1,000,000、利益準備金¥100,000である。利益準備金は会社法の定める額を積み立てるものとする。
【仕訳】
(借)繰越利益剰余金 1,600,000
/(貸)未払配当金   1,000,000
/(貸)別途積立金    500,000
/(貸)利益準備金    100,000

【合格直結の解法】
(1)配当額の1/10を利益準備金へ
@¥10×100,000株=配当額1,000,000円
利益準備金=100,000円
(2)資本金×1/4=1,250,000円
資本準備金+利益準備金=1,000,000円+100,000円
したがって、あと150,000円は準備金へ積立必要。
よって、利益準備金へ配当額の1/10=100,000円を積み立て

【設例2】
株主総会において、繰越利益剰余金¥3,000,000のうち、1株当たり10円の配当金(発行済株式総数は100,000株)及び別途積立金¥500,000を積み立てることに決定した。なお期末各勘定残高は、資本金¥5,000,000、資本準備金¥1,000,000、利益準備金¥200,000である。利益準備金は会社法の定める額を積み立てるものとする。
【仕訳】
(借)繰越利益剰余金 1,550,000
/(貸)未払配当金   1,000,000
/(貸)別途積立金    500,000
/(貸)利益準備金     50,000

【合格直結の解法】
(1)配当額の1/10を利益準備金へ
@¥10×100,000株=配当額1,000,000円
利益準備金=100,000円
(2)資本金×1/4=1,250,000円
資本準備金+利益準備金=1,000,000円+200,000円
したがって、あと50,000円準備金へ積立必要。
よって、配当額の1/10=100,000円であるが、資本金×1/4に達するまでの残額¥50,000を利益準備金に積み立て

配当時の準備金強制積立のまとめ
1.資本準備金と利益準備金の合計額が資本金の1/4に達するまでは
2.配当に出す繰越利益剰余金の1/10を利益準備金に積み立てる