この講で学習すること
・(旧)定率法で備忘価額(1円)まで減価償却するには
・(旧)定率法の特徴~逓減性の功罪
なぜ「残存価額」から「備忘価額」に変わったのか
前講では、定率法のそもそもの考え方をご紹介しました。
これは、耐用年数に応じて、最終的に残存価額10%にするには、毎年何パーセントずつ減価償却していけばいいのか、ということでした。
ところが、数年前に実務の世界では、「残存価額」の考え方から「備忘価額」に変わりました。
つまり、耐用年数を経過した固定資産に、10%もの処分価値はないだろう、ということです。
ですから、定額法にせよ、定率法にせよ、基本的には資産価値が0(ゼロ)になるまで減価償却することになりました。
それにより、定額法の減価償却費算出式も、旧来の
「(取得原価-残存価額)÷耐用年数」
から、現在では「残存価額」がゼロになったので、
「取得原価÷耐用年数」
になっています。
しかし、完全にゼロになるまで減価償却してしまうと、固定資産そのものが存在しないことと見分けがつかなくなります。
つまり、完全に除却した(=固定資産として存在しなくなった)場合と区別するために、1円分だけ、固定資産として残しておくのが「備忘価額」の考え方です。
備忘価額まで定率法で減価償却すると
さて、この備忘価額(1円)まで、定率法で減価償却するとどうなるでしょうか?
取得原価¥100.000を5年後に¥1にするには、ちょうど毎年90%ずつ減価償却していけば、うまくいきます。
これで計算上は「めでたしめでたし」ですが、よく見ると、かなり極端な減価償却になっています。
ご覧のとおり、1年目で(旧)残存価額の10%までイッキに減価償却しています。
一方、3年目以降は、900円とか90円とか9円とか、どうでもいい金額です。
これでは、せっかく償却率を計算しても、初年度に取得原価のほとんどが費用化されているので、「耐用年数にわたって取得費用を期間配分する」という減価償却の意味をなしていません。
ではどうすればいいのか?
そこで考え出されたのが「200%定率法」です。