この講で学習すること
・その他有価証券の期末評価と全部純資産直入法(前講)の復習
・部分純資産直入法とは
・保守主義の原則とは

その他有価証券の期末評価~全部純資産直入法の復習

▶▶▶前項「その他有価証券の期末評価~全部純資産直入法とは?」

【設例】
決算日において、その他有価証券の内訳は次のとおりであった。
・A社株式
帳簿価額:100,000/時価:120,000
・B社株式
帳簿価額:50,000/時価:40,000
(単位:いずれも円)

その他有価証券は、期末決算時に時価評価に置き換えるのでした。
全部純資産直入法では、複数あるその他有価証券の簿価総額と時価総額を比較して、「その他有価証券評価差額金」勘定(純資産)に計上するのでした。

【全部純資産直入法による仕訳】
(借)その他有価証券 10,000
/(貸)その他有価証券評価差額金 10,000

そして、次期に入ったら、期首再振替で戻す必要がありました(洗替法)

【仕訳】
(借)その他有価証券評価差額金 10,000
/(貸)その他有価証券 10,000

部分純資産直入法とは

それでは、もう一つの「部分純資産直入法」とはどういうものか?
本設例でいえば、

A社株式の評価差額(プラス)については「その他有価証券評価差額金」(純資産)として計上し、
B社株式の評価差額(マイナス)については、損益(損失)としてP/Lに表現する

というものです。
一般化して言いますと、

「簿価<時価」(プラス)になるものは「その他有価証券評価差額金」勘定(純資産)
「簿価>時間」(マイナス)になるものは「投資有価証券評価損益」勘定(費用・損失)

に分けて処理するのが、部分純資産直入法のやり方です。
評価益になるものだけ(部分)、純資産に直入するのです。

【部分純資産直入法による仕訳】
(借)その他有価証券 20,000
(借)投資有価証券評価損益 10,000
/(貸)その他有価証券評価差額金 20,000
/(貸)その他有価証券 10,000

つまり、
時価>簿価となっているA社株式の+20,000円は、損益表示せずその他有価証券評価差額金(純資産)
時価<簿価となっているB社株式の-10,000円は、当期損失としてP/L
に表現するのです。
これだと、P/Lが悪目になりますよね?
いいんでしょうか?

なんでプラスとマイナスで分けるのか?

会計処理の基本的な考え方・原則として、「保守主義の原則」というのがあります。
株式会社の関係者(株主などの出資者や債権者など)を意識し、経営成績を良く見せる「粉飾」はNGであるのに対し、逆に、慎重に控えめに”悪目”に表現する考え方が、保守主義の原則のぶっちゃけたところです。
もちろん、利益を控えめ・悪目に出すのは、逆に言えば、脱税にもつながるので、税申告に対しては別途調整が必要になる場合があります(税効果会計など)。

ただし、部分純資産直入法の場合でも、洗替法は適用されますから、次期に入ったら期首再振替が必要です。

【部分純資産直入法の場合の期首再振替仕訳】
(借)その他有価証券評価差額金 20,000
(借)その他有価証券 10,000
/(貸)その他有価証券 20,000
/(貸)投資有価証券評価損益 10,000

ちなみに、部分純資産直入法の方は、日商簿記1級の出題範囲であり、2級では出ませんから、難しく感じても大丈夫です。

その他有価証券の時価評価(部分純資産直入法)のまとめ
・部分純資産直入法では、保守主義の考え方に基づき、
時価>簿価となるものは「その他有価証券評価差額金勘定」(純資産)
時価<簿価となるものは「投資有価証券評価損益」(当期の損失)
に分けて処理すること