この講で学習すること
・100%子会社じゃなかったら
・親会社以外の株主分はどうする?
・なぜ、非支配株主分の純資産まで消去するのか?

100%子会社じゃなかったら

前講まで学習してきた「投資と資本の相殺消去」の設例は、すべて、100%子会社の場合という前提でした。
つまり、子会社の株式の100%を親会社が握っているので、親会社以外に、子会社の株主がいない、ということです。

しかし、親会社としての支配権を獲得するには、原則として子会社の発行済み株式の50%超を握っていればいいわけですから、子会社に50%未満の、親会社以外の株主が存在することもあります。

このように100%子会社ではない場合は、親会社の投資(子会社株式)と相殺消去の対象となる子会社の純資産は、親会社の出資比率分となります。

【設例1】
P社はX0年度末(X0年3月31日)に、以前から活動しているS社の株式80%を12,000円で取得した。
X0年度末の個別貸借対照表は次のとおりである。
これらに基づき、X0年度末の連結貸借対照表を作成しなさい。

投資と資本の相殺消去例題B/S(のれんあり)

【親会社分の投資と資本の相殺消去仕訳】
(借)資 本 金 4,000(=S社の資本金¥5,000×80%)
(借)資本剰余金 2,400(=〃資本剰余金¥3,000×80%)
(借)利益剰余金 1,600(=〃利益剰余金¥2,000×80%)
(借)の れ ん 4,000
/(貸)子会社株式 12,000

親会社以外の株主分はどうする?

一方、子会社の株主のうち、親会社以外の株主(これを「非支配株主」といいます)の出資分(20%)についても、次のような振り替え仕訳を行います。

【非支配株主持分への振替仕訳】
(借)資 本 金 1,000(=S社の資本金¥5,000×20%)
(借)資本剰余金   600(=〃資本剰余金¥3,000×20%)
(借)利益剰余金   400(=〃利益剰余金¥2,000×20%)
/(貸)非支配株主持分 2,000

ここで新たに貸方に登場しました「非支配株主持分」は、その名のとおり、子会社株主のうち、過半数を占めて支配している親会社ではない、非支配株主側の持分という意味の科目で、純資産です。
ですから、増えれば貸方、減れば借方に仕訳します。

少し長い科目名ですが、覚えてください!
非支配株主の分の純資産という意味です。

支配獲得日の連結修正仕訳としては、上記の【親会社分の投資と資本の相殺消去仕訳】と、非支配株主側の【非支配株主持分への振替仕訳】を合体して、

【支配獲得日の連結修正仕訳】
(借)資 本 金 5,000(=S社資本金全額)
(借)資本剰余金 3,000(=S社資本剰余金全額)
(借)利益剰余金 2,000(=S社利益剰余金全額)
(借)の れ ん 4,000
/(貸)子会社株式  12,000
/(貸)非支配株主持分 2,000

となります。

なぜ、非支配株主分の純資産まで消去するのか?

親会社分(この設例では80%分)の子会社純資産を親会社の投資分は、連結で一つの会社と考えた場合、「自分から自分への投資」になるため相殺消去するのは理解できます。
ではなぜ、「自分から自分への投資」ではない、非支配株主の分の子会社純資産まで、借方で消去する必要があるんでしょうか?

答えは、連結会計は親会社(の株主)の視点でなされるためだからです。

当たり前のことですが、
P社の純資産は、P社の株主のものです。
S社の純資産は、S社の株主のものです。
では、P社とS社を連結させたグループ全体の連結B/S上の純資産は誰のものでしょうか?

答えは、親会社であるP社(の株主)のものになります。

つまり、連結財務諸表上の資本金・資本剰余金・利益剰余金というのは、親会社であるP社(の株主)の資本金・資本剰余金・利益剰余金という意味です。
しかし、親会社以外の株主(20%)分の資本金・資本剰余金・利益剰余金は、P社(の株主)の資本金でも資本剰余金でも利益剰余金でもありません。

そこで、連結修正仕訳で、消去して代わりに「非支配株主のものですよ」という意味をあらわす「非支配株主持分」(純資産)に振り替えるのです。

投資と資本の相殺消去~非支配株主の登場のまとめ
・親会社が子会社の株式を100%保有ではなく、他に株主がいる場合、親会社以外の株主を「非支配株主」という
・上記の場合、親会社の投資と資本の相殺消去の対象は、子会社の純資産×親会社の出資比率分と、親会社による投資となり、差額をのれんとする
・子会社の純資産×非支配株主の出資比率分は、「非支配株主持分」(純資産)に振り替える

▶▶▶次講「開始仕訳とは」へ

解ける!過去問レベル問題

以下の[資料]に基づき、ミナホ株式会社にて行う支配獲得日における連結修正仕訳をしてください。 なお、仕訳に使う科目は、語群から適切なものを選んでください。
[資料]ミナホ株式会社は、X1年3月31日にヨンマックス株式会社の株式の80%を¥600,000で取得し、ヨンマックス社を連結子会社とした。支配獲得日におけるヨンマックス社の純資産の内訳は、資本金¥300,000、資本剰余金¥200,000、利益剰余金¥100,000であった。
(語群:子会社株式・関連会社株式・のれん・資本金・資本剰余金・利益剰余金・非支配株主持分)

>>>解答・解説はこちら(「スキマ簿記2級【問題演習編】」サイトへ)