この講で学習すること
・「改定償却率」「保証率」「償却保証額」とは?
・こんな小難しいコトバを使っていながら、言いたいことはたったこれだけ!
・定額法にする「最後」って、いつ
「改定償却率」?「保証率」?
まずは、現行で使用されている200%定率法の償却率表をご覧ください。
耐用年数ごとの償却率のほかに、「改定償却率」「保証率」なる欄が加わっています。
なにそれ?
旧定率法よりわけわからなくなってんじゃんか!
改定償却率とは
まず「改定償却率」とは何か?
「改定償却率」とは、200%定率法で計算した減価償却額が、償却保証額を下回る場合には、通常の償却率ではなく、こちらの改定償却率の方を使ってね、というものです。
償却保証額とは
それでは、その「償却保証額」とは何か?
「償却保証額」とは、最低でもこの「保証額」以上は償却してね、というラインのことです。
定率法の場合、年々減価償却額は逓減(年々小さくなる)するのでした。
そのため、備忘価額の1円までなかなか減らないわけでした。
そこで、通常の償却率では逓減してしまうところ、基準額(=償却保証額)を設けて、それ未満になったら、強制的にもっと高い割合の「改定償却率」の方を使いなさい、というわけです。
保証率とは
ところで、その最低ラインとなる「償却保証額」って、具体的にいくらなのか?
算出の公式があります。
償却保証額 = 取得原価 × 保証率
そうです。
「保証率」とは、減価償却額の最低基準である償却保証額を出すための係数だったんです。
改定償却率・保証率・償却保証額を使って、実際に1円まで減価償却してみる
それでは、前講の設例「取得原価10万円、耐用年数5年」の固定資産を200%定率法で減価償却し、この「改定償却率」「保証率」「償却保証額」を使って、備忘価額の1円になるまで減価償却してみましょう。
まずは、減価償却費の最低ラインとなる「償却保証額」を求めます。
上表の耐用年数5年の欄を使います。
「保証率」の欄の「0.10800」を取得原価¥100,000に掛けて、¥10,800となります。
これが、この設例の場合の償却保証額です。
毎年の減価償却費はこの償却保証額を上回っているかどうか?
200%定率法での減価償却スケジュール(上図)の毎年の減価償却額に注目しましょう。
1年目:¥40,000
2年目:¥24,000
3年目:¥14,400
・・・と、ここまでは償却保証額¥10,800を上回っているので、そのまま200%定率法でOKですが、
4年目:¥8,640
5年目:¥5,184
と、4年目から償却保証額に届かなくなります。
なので、4年目から、通常の償却率「0.4」ではなく、改定償却率の方を適用します。
「0.5」です。
そこで、4年目の減価償却費計算をやり直します。
直前の未償却残高¥21,600に、改定償却率0.5を掛けて、¥10,800を、改定後の減価償却費とします。
最後に、5年目の改定後減価償却費計算です。
4年目と同様に、改定償却率0.5を使うわけですが、直前(4年目)の未償却残高である¥10,800に改定償却率0.5を掛けても、備忘価額の1円になりません。
ここは、直前の未償却残高ではなく、1年前(3年目)の未償却残高¥21,600に改定償却率0.5を掛けます。
すると、減価償却費は¥10,800となり、未償却残高は0円になるわけですが、備忘価額1円を残すため、改定後の減価償却費は¥10,799にします。
このように、最後の年は直前の未償却残高ではなく、もう1年前の未償却残高に掛ける、ということに関しては、
「調整前償却額が償却保証額未満となる年分以後は改定取得価額(最初に調整前償却額が償却保証額未満となる年の期首未償却残高)」
に改定償却率を掛けて減価償却費を算出する旨、公式に説明がされています(税務署発行「平成27年分青色申告決算書(一般用)の書き方」より)。
何言ってるか、意味わかんないですよね。
翻訳(意訳)しますと、200%定率法の通常の償却率で計算した減価償却額が、償却保証額に届かなくなる年以降(設例では4年目以降)は、最初に償却保証額に届かなくなった年の期首未償却残高(つまり設例では4年目の期首=3年目の期末未償却残高)を使え、といっているのです。
要するに、最後の何年かは定額法ってこと
「改定償却率」「保証率」「償却保証額」・・・
意味はなんとなくわかったとして、難しすぎですよね。
しかしこれは、あえて難しくしたくてこうしているのではありません。
本当は、カンタンなことを、正確に言おうとすると、こんな難しいことになってしまうのです。
要するに、200%定率法の償却率では、最後1円にならないので、最後の何年かは残りの未償却残高を定額法で1円になるまで償却しちゃう、ってことだけなんです。
「最後の何年か」って、具体的に何年?
それが、通常の償却率で計算した減価償却額が償却保証額を下回り始めた年から、ということです。