この講で学習すること
・補助金をもらえるとうれしいが・・・
・圧縮記帳とは?
・減価償却は?

補助金をもらえるとうれしいが・・・

多額の出費を要する固定資産の取得に際し、補助金を受けられることがあります。
例えば、環境に優しい設備を入れる場合とか、創業したてで店舗や機械装置などのまとまった資金を要する固定資産を導入する場合など、所定の要件を満たすと、国庫補助金などの交付が受けられる場合があります。

【設例】
(1)備品の購入にあたり国庫補助金¥200,000の助成が受けられることになり、当社の当座預金口座に振り込まれた。

【仕訳】
(借)当座預金 200,000
/(貸)???? 200,000

貸方は、どんな勘定科目が入るのか?

答えは「国庫補助金受贈益」勘定です。
その名のごとく、収益の勘定です。
ということは、法人税等の課税対象になります。
ただでさえ、当該備品の購入で多額の資金をキャッシュ・アウトしたうえに、税金まで増えるとなると、資金繰り的に厳しい事態も考えられます。

そこで・・・

圧縮記帳とは?

国庫補助金をもらう取引を、課税対象となる収益を増やすのではなく、補助対象固定資産の購入代価から差し引き(直接減額方式)、補助金分だけ安く買えたように処理します。
これを「圧縮記帳」といいます。

【設例】
(2)当期首に、(1)による国庫補助対象の備品¥1,000,000が納入されたので本日より使用を開始し、直接控除方式による圧縮記帳の処理を行った。なお、代金は今月末に支払うことになっている。

【仕訳】
(借)備     品 1,000,000
(借)固定資産圧縮損  200,000
/(貸)未  払  金 1,000,000
/(貸)備     品  200,000

¥1,000,000の価値の固定資産として、備品が借方に入ってきますが、国庫補助金を充てて、あたかも¥200,000安く買えたように、備品の価値を減額します。
その資産価値減少について「固定資産圧縮損」勘定で損失として計上するわけです。
ここんところが「圧縮記帳」です。
この会計処理のキモは、(1)の仕訳で発生した「国庫補助金受贈益」という収益を、圧縮記帳による「固定資産圧縮損」という損失で同額分相殺し、課税対象が増えないようにしているわけです。

では、補助金をもらったのに、その分の税金は免除されると喜んでいていいんでしょうか?

減価償却は?

【設例】
本日決算日につき、上記備品について定額法(残存価額ゼロ、耐用年数5年、間接法)により減価償却を行う。

【仕訳】
(借)減価償却費 160,000
/(貸)備品減価償却累計額 160,000

減価償却費は、当然ながら、もともとの取得原価である¥1,000,000ではなく、圧縮記帳後の¥800,000をベースに計算します。

もしこれが国庫補助金を受けての圧縮記帳をしていなければ、取得原価の¥1,000,000÷耐用年数5年=¥200,000の減価償却費(年額)になりますよね。

つまり、今回の設例では圧縮記帳により、年間4万つまり耐用年数の5年間で20万円ほど、減価償却費が安くなるわけです。
それだけ、減価償却による損金算入(課税対象から減額すること)が減るわけですから、税金の支払いを耐用年数にわたって繰り延べしているだけということになります。

圧縮記帳(直接減額方式)のまとめ
・補助金をもらったら「国庫補助金受贈益」という収益で処理
・補助対象固定資産の取得原価から、補助金充当額分だけ安く買えたようにするため「固定資産圧縮損」勘定で、資産を減らす
・とはいえ、減価償却費も減るので、耐用年数を通じてトータルでは課税額は変わらない