この講で学習すること
1.なぜ注文時に売上を計上してはいけないのか?(3級の復習)
2.「出荷基準」「引渡基準」「検収基準」とは?

売上をいつ計上するのか~販売基準とは?

【設例】
(1)商品¥10,000の注文を受け、代金の2割を内金として現金で受け取った。
(2)(1)の商品を引き渡し、代金については内金を相殺した残額を掛けとした。
(3)(2)の掛代金について全額現金で回収した。

(1)では注文を受け、代金の一部も受け取っていますが、売上に計上してはいけませんでした。
では、どう仕訳すればいいんでしたか?
【仕訳】
(1)
(借)現 金 2,000
/(貸)前受金 2,000

売上と同じ貸方ですが、収益ではなく、債務(後で商品を引き渡さなければならない義務、あるいは商品引き渡し時には代金から減額しなければならない義務)として「前受金」としておくのが、内金・手付金の扱いでした。
なぜ、売上を計上してはいけないのか、説明できますか?
まだ当店は、商品を引き渡すという義務を履行していないので、収益として認識するにはまだ早いわけです。

(2)・(3)の仕訳はまとめて・・・
【仕訳】
(2)
(借)前受金 2,000
(借)売掛金 8,000
/(貸)売 上 10,000
(3)
(借)現 金 8,000
/(貸)売掛金 8,000

(2)では、商品を100%引き渡したので、100%売上(収益)を計上しています。
このように、未回収の代金があっても、商品を引き渡せば、その時点で売上収益を計上するやり方を「販売基準」といいます。
一方、(3)で代金を100%回収するわけですが、保守的に代金を回収した時点で売上収益を計上する考え方を「回収基準」といいます。
が、税の実務上でも販売基準が原則とされているので、販売基準で売上収益を認識するのが一般的です。

出荷基準・引渡基準・検収基準とは

売上収益の認識について、「販売したとき」(販売基準)なのはわかりました。
ところで「販売」とは、どの時点のことをいうのでしょうか?
小売り販売などでは、店頭で即商品引き渡しなので、「販売時」を考える必要もないのですが、通信販売などのように、出荷、到着、検品(検収)にタイムラグの発生する業態では、どのタイミングをもって売上を計上するのかを決めなくてはなりません。
このとき、

  • 商品の出荷時点で売上計上  ・・・出荷基準
  • 商品の客先到着時点で売上計上・・・引渡基準
  • 商品の検品終了時点で売上計上・・・検収基準

とそれぞれ呼びます。
以上のどの時点で売上収益を認識するのかは各企業体の任意ですが、選択した基準で全て統一する必要があります。
(普段は検収基準だけれども、今月は決算月で売上目標を達成したいので今月だけ出荷基準、というのはNG!)
最後に、具体例を示しておきます。

【設例】
(1)得意先より注文のあった商品¥10,000を発送し、代金は掛けとした。
(2)(1)の商品に関し、得意先より商品が間違いなく到着した旨の連絡を受けた。

【出荷基準の仕訳】
(1)
(借)売掛金 10,000
/(貸)売 上 10,000
(2)<仕訳無し>
【検収基準の仕訳】
(1)<仕訳無し>
(2)
(借)売掛金 10,000
/(貸)売 上 10,000

売上収益の認識基準のまとめ
【商品か代金回収か】
・販売基準:商品引き渡し時に売上認識
・回収基準:代金の回収時に売上認識
【商品発送から相手に渡るまでにタイムラグがある場合】
・出荷基準:商品発送時に売上認識
・引渡基準:商品が相手に到着したときに売上認識
・検収基準:相手が検品し間違いないことを確認した時に売上認識

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