この講で学習すること
・外貨建取引の換算と記帳方法(再掲)
・決算時の為替換算
・為替差損益のP/L表示
・期末決算後、次期に代金決済したら?
外貨建取引の換算と記帳方法(再掲)
前講で学習しましたとおり、ドルやユーロなどの外貨ベースで仕入や売上を行った場合、取引当日の為替レートで日本円に換算する必要がありました。
【設例1】(再掲)
(1)3月8日、アメリカの仕入先より商品100ドルを掛けで購入した。この時の為替相場は1ドル¥120であった。
(2)3月16日、アメリカの得意先に商品1,000ドルを輸出し代金は掛けとした。この時の為替相場は1ドル¥118であった。
【仕訳】
(1)
(借)仕 入 12,000
/(貸)買掛金 12,000
(2)
(借)売掛金 118,000
/(貸)売 上 118,000
(1)取引当日(3/8)の為替レート$1=¥120を使って、100ドルを日本円に換算。
(2)取引当日(3/16)の為替レート$1=¥118を使って、1,000ドルを日本円に換算。
決算時の為替換算
ところで、掛代金が決済される前に決算日を迎えると、残っている買掛金・売掛金について、決算日当日の為替レートで換算し直し(評価替え)します。
売買目的有価証券などと同じように
「決算日である今日もし仮に決済したら?」
という考え方です。
【設例1’】
3月31日、決算日を迎えた。
【設例1】(1)(2)の掛代金(未決済)について、決算整理を行う。
なお、3月31日の為替相場は1ドル¥112であった。
【仕訳】
(1)
(借)買 掛 金 800
/(貸)為替差損益 800
(2)
(借)為替差損益 6,000
/(貸)売 掛 金 6,000
【合格直結の考え方】
(1)で3/8に¥12,000で計上した買掛金が、3/31のレート換算では¥11,200に目減りしました。支払うべき負債が減ったので、為替差損益は「益」(貸方)のほうですね。
(2)は3/16に¥118,000で計上した売掛金が、3/31のレート換算で¥112,000に目減りしてしまい、もらえる掛代金が減ったので、為替差損益は「損」(借方)のほうですね。
為替差損益のP/L表示
上述のように、為替差損益勘定には、「益」の場合には貸方、「損」の場合は借方に計上されていくわけですが、期末決算時を経て、最終的な財務諸表である損益計算書には、お約束として、次のような表示の仕方となります。
【重要】為替差損益のP/L表示
為替差損益勘定について
借方残高<貸方残高なら、その差額を「営業外収益」に「為替差益」として表示
借方残高>貸方残高なら、その差額を「営業外費用」に「為替差損」として表示
つまり、為替差損益のままではなく、貸借差額を「為替差益」か「為替差損」かどちらかで表示するということです。
例えば、もし当期の為替絡みの決算整理事項が【設例2】の2取引分だけだとしたら、為替差損益勘定は借方残=¥6,000、貸方残=¥800で、差し引き借方の方が¥5,200大きいわけで、この額を「為替差損」と営業外費用に表示することになります。
もし仮に、為替差損益勘定の借方と貸方が逆だったとしたら(貸方の方が大きかったら)、貸借差額を「為替差益」として営業外収益に表示することになります。
期末決算後、次期に代金決済したら?
以上の決算整理をしたうえで、次の期に入って代金決済をしたらどうなるでしょうか?
【設例2】
(3) 4月8日、(1)の商品代金100ドルを支払うために取引銀行でドルに両替し、当座預金口座より仕入先に送金した。支払時の為替相場は1ドル¥115であった。
(4) 4月16日、(2)の商品代金1,000ドルの送金があり、取引銀行で円貨に両替し当座預金口座に入金した。この日の為替相場は1ドル¥110であった。
【合格直結の考え方】
(3)決算時に¥11,200に置き換えた買掛金が、実際には4/8のレートにより¥11,500必要になりましたので、期末決算時点からは¥300の支払い増です。
(4)決算時に¥112,000で評価した売掛金が、実際には4/16のレートによりさらに目減りして¥110,000しか受け取れなかったので、期末決算時点からさらに¥2,000の受取り額減です。
【仕訳】
(3)
(借)買 掛 金 11,200
(借)為替差損益 300
/(貸)当座預金 11,500
(4)
(借)当座預金 110,000
(借)為替差損益 2,000
/(貸)売 掛 金 112,000
売掛金は、売上時の¥120,000から決算時の¥112,000、そして決済時の¥110,000と、みるみる不利な方に目減りしていきました。
このような為替レートの変動によるリスクを減らす手立てはないものでしょうか?
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