この講で学習すること
・貸倒処理~貸倒損失
・なぜ貸倒引当金が必要なのか
・貸倒引当金を使った貸倒処理
・貸倒引当金の戻入と繰入(決算整理)
・貸倒処理した債権が回収できたら~何でも償却債権取立益では済まない

貸倒損失

【設例】
(1)得意先玉喜商店に商品¥3,000を販売し、代金は掛けとした。
(2)玉喜商店が倒産し、(1)の売上代金が貸倒れとなった。(貸倒引当金設定なし)
【仕訳】
(1)
(借)売掛金 3,000
/(貸)売 上 3,000
(2)
(借)貸倒損失 3,000
/(貸)売 掛 金 3,000

(1)では、まだ対価である代金をもらってないのに、貸方では売上収益を計上してしまうのでした(販売主義)。
これが、現金主義(単式簿記)とは違う、複式簿記の特徴でもありました。
しかしこれにはリスクもあります。
万一、得意先が倒産などして支払い不能に陥ると、(2)のように貸倒損失(費用・損失)を計上して、売上で上げた収益を取り消すことになります。

なぜ貸倒引当金が必要なのか

売上による収益を、万一の貸倒れの際には貸倒損失で打ち消すわけです。
それが同じ会計期間内で、売上収益と貸倒損失が発生すれば、その期のP/Lにどちらも反映されるわけですが、会計期間をまたいでしまったら・・・?
前の期は売上の収益だけがP/Lに反映され、次の期には、前の期に収益としてあげた売上に関する債権の貸倒れで、損失だけがP/Lに計上される、という「時期ずれ」が生じます。

そこで、売上収益を上げた会計期末に決算整理として売掛債権の一部(貸倒見込額)を貸倒引当金に繰り入れます。

【設例-貸倒引当金繰入】
(3)本日決算日(平成28年12月31日)につき、受取手形と売掛金の期末残高総額(¥100,000)に対して2%の貸倒れを見積もる
【仕訳】
(3)
(借)貸倒引当金繰入 2,000
/(貸)貸倒引当金   2,000

借方の「貸倒引当金繰入」は費用であり、売掛債権が生じた期に、先に費用化しておくわけです。
こうしておくことで、次の期以降に貸倒れが発生した際には、期末に繰り入れておいた貸倒引当金をまず充てるということになります。

貸倒引当金を使った貸倒処理

【設例-貸倒引当金を充てる貸倒処理】
(4)平成28年12月15日に玉喜商店に売り上げた代金に関する売掛金¥3,000が平成29年1月10日に貸倒れた。なお、貸倒引当金勘定の残高は¥2,000である。(当店の会計期間が1/1~12/31)
【仕訳】
(4)
(借)貸倒引当金 2,000
(借)貸倒損失  1,000
/(貸)売 掛 金 3,000

売掛債権(資産)を¥3,000失ったわけですが、この¥3,000をまるまる当期の貸倒損失にせず、前期末に先に費用化して繰り入れてあった貸倒引当金¥2,000をまず充てて、足りない¥1,000分だけ、当期の貸倒損失に計上します。

【注意】
設例では、前期の売上に係る売掛金が、期をまたいで当期に貸倒れした場合なので、貸倒引当金を充てました。
これがもし、当期の売上に係る売上債権が、同じ当期中に貸倒れたら・・・どうすればいいと思いますか?
この場合は全額「貸倒損失」です。
貸倒引当金は、あくまで前期以前の売上債権に係る貸倒れに適用するものです。
この点を狙ったヒッカケ出題が過去の日商簿記2級で出題されていますので、注意してください。

もし貸倒れがなかったら~貸倒引当金戻入

幸いにして、貸倒れがなかった、あるいは貸倒引当金に残高が残ったまま、会計期末を迎えたら・・・貸倒引当金戻入(収益)勘定を使って、戻します。
ただし、会計期末は、当期の売掛債権に対し、来期以降の貸倒れに備えて、貸倒引当金を繰り入れます。
日商簿記検定で通常出題される差額補充法の場合、「戻入額>繰入額」であればその差額を貸倒引当金戻入勘定で戻しますが、「戻入額<繰入額」であれば、その差額を貸倒引当金繰入勘定で繰り入れます。

貸倒処理した債権が回収されたら~何でも「償却債権取立益」は間違い!

【設例-貸倒処理済み債権の回収】
(5)(4)で貸倒処理した売掛債権のうち、¥500について、平成30年2月1日に現金で回収した。(当店の会計期間が1/1~12/31)

【合格直結の考え方】
平成28年1月10日の貸倒処理による貸倒損失は、平成29年度末決算時にP/Lに表現し、処理がもう終わっています。
それが、期をまたいで平成30年度に一部回収されたということです。
前年度分の貸倒損失を反対仕訳で打ち消すことはもうできないので、「償却債権取立益」という勘定を使います。
▶▶▶償却債権取立益(3級)の復習は・・・「スキマ時間で簿記3級!~償却債権取立益」へ

【仕訳】
(5)
(借)現     金 500
/(貸)償却債権取立益 500

ところでこの「償却債権取立益」ですが、難しい科目名なので、貸倒債権が回収されると条件反射的にこの勘定科目を使いたくなりますが、そこが出題者のヒッカケに引っ掛かるポイント。
償却債権取立益は、あくまで前期以前に貸倒処理した債権が戻ってきたというときに使うもの。
これがもし、同じ会計期間内に貸倒処理した債権であれば・・・貸倒損失の打ち消し(反対仕訳)になるわけです。
この点を狙った出題が、過去の日商簿記2級でありましたので、注意が必要です。
▶▶▶次講「営業外債権に対する貸倒引当金繰入と一括評価・個別評価」へ