この講で学習すること
・返品と値引、割戻の違いは?
・前期の売上が、次期に返品されたら?
・返品調整引当金の繰り入れ
・返品調整引当金繰入のP/L表記

返品と値引、割戻の違いは?

【設例1】
(1)X9年2月20日、商品¥12,000(原価¥8,000)を得意先に販売し、代金は掛けとした。
(2)X9年3月20日、(1)で販売した商品が品違いのため返品された。
なお、当社の会計期間は、4/1~3/31である。

【仕訳】
(1)
(借)売掛金 12,000
/(貸)売 上 12,000
(2)
(借)売 上 12,000
/(貸)売掛金 12,000

日商簿記3級や、本サイトの「売上割引」の講でも学習しましたとおり、返品(戻り)の処理方法は、値引や割戻の場合と同じように、売上時の仕訳を反対仕訳で取り消すやり方でした。

しかし、返品(戻り)には、値引や割戻とは決定的に異なるところがあります。
何だと思いますか?

それは、商品が戻ってくることです。

ですから、仕訳上は売上時の仕訳(売掛金/売上)の取り消しだけですが、商品有高帳には、戻り商品が記帳され、棚卸資産が増加することになります。

商品が増加することについて、仕訳をしなくてもよいのか?

売上と同じ会計期間の返品(戻り)であれば、期末棚卸により、繰越商品にカウントされ、売上原価からは控除されるので、この決算整理仕訳で処理されることになります。
(▶▶▶この辺の、戻り商品のカラクリについては、「【補足】そうたっだのか!返品調整引当金」へ)

では、売上と同じ会計期間ではなく、次期に返品されたら?

前期の売上が、次期に返品されたら?

では、【設例1】の返品(売上戻り)ついて、前期の売上分に対する戻りが、次期に発生したら?
つまり、会計期間をまたいで、前の期の売上に対応する返品が、次の期に発生したら?

期をまたぐ貸倒損失の場合のように、収益をP/Lにカウントする期と、返品(売上戻り)によってP/L上の収益をマイナスする期がずれてしまうわけです。

そこで、貸倒れの場合のように、売り上げが発生した期(の期末決算時)に、見込みで引当金を繰り入れておき、次期以降に実際に返品(売上戻り)が発生した際に、引当金から引き当てることができます。

返品に関する引当金なので、返品調整引当金といいます。

この返品調整引当金の繰入額の算出方法ですが、売上割戻引当金のように、売上の取消分をまるまる計上するのではなく、返品に含まれる利益の部分(【設例1】でいえば、売値¥12,000-原価¥8,000=利益¥4,000の部分)で計算します。

返品調整引当金の繰り入れ

【設例2】
X9年3月31日、本日決算日につき、売掛金残高¥1,000,000の10%を翌期の返品額と見積もり、その額に売上総利益率30%を乗じた金額を返品調整引当金として計上した。

【仕訳】
(借)返品調整引当金繰入 30,000
/(貸)返品調整引当金   30,000

【設例3】
前期に掛売りした商品¥12,000(原価¥8,000)が品違いのため返品され、売掛金と相殺した。なお、前期末に設定した返品調整引当金は¥30,000の残高である。

【仕訳】
(借)返品調整引当金 4,000
(借)仕     入 8,000
/(貸)売  掛  金 12,000

この仕訳のポイントは、何といっても、取り消される売掛金¥12,000全額に対して引当金を充てるのではなく、原価相当(¥8,000)分は、なんと、仕入勘定で仕訳するところです。
(▶▶▶なぜ仕入れたわけでもないのに仕入勘定を使うのかについて詳しくは、「【補足】そうだったのか!返品調整引当金」へ)

日商簿記2級の引当金の論点の中で、最も重要な仕訳です。

返品調整引当金繰入のP/L表記

決算整理として計上された返品調整引当金繰入勘定は、損益計算書上、どの費用グループに表記されるのか?
売上割戻引当金繰入の場合のように、売上高から控除するのではありません。
正解は、売上総利益から控除です。
これも、売上高ではなく、利益部分にフォーカスした引当金だということです。

返品調整引当金のPL表記

返品調整引当金のまとめ
・前期以前の売上に関する返品(売上戻り)に対して引き当てる引当金を返品調整引当金という
・返品調整引当金は、当該売上のあった期の期末(決算時)に計上する
・返品調整引当金繰入の算出方法は、次期に予想される返品額に含まれる利益相当部分について計上
・返品調整引当金繰入勘定は、P/L上、売上総利益から控除する形で計上する